会員で本会世話人の桑原ヒサ子さんが、これまでの研究をまとめた著書を刊行されましたので、ご紹介いたします。
桑原 ヒサ子『ナチス機関誌「女性展望」を読む 女性表象、日常生活、戦時動員』青弓社、2020年9月
432頁、4800円+税
ISBN978-4-7872-2090-5 C0020
1932年から敗戦直前まで発行されたナチスの機関誌「女性展望」は、当時の女性雑誌市場で第一位の販売部数140万部を記録した。この雑誌は、ナチ・女性団のエリートから成る全国女性指導部の「新聞・雑誌・プロパガンダ」部門が編集・発行した女性雑誌として、社会的・文化的領域で「理想的な」女性像を伝達する有力メディアのひとつだった。
本書は、官製女性雑誌のために戦後ドイツの記憶から消し去られた「女性展望」を掘り起こし、ナチス支配下に生きた女性たちの全体像を再構成する試みである。300点の貴重な図版を所収する。
目次
はじめに [試し読み:https://note.com/seikyusha/n/n0e25829ddc65]
第1部 「女性展望」が描く女性像と日常生活
第1章 表紙から明らかになるジェンダーとその揺らぎ
第2章 多様な母親表象とナチ女性団の「民族の母」という概念
第3章 連載小説とその作家たち
第4章 ファッションと料理のページから再構成する第二次世界大戦下の暮らし
第5章 広告が描き出す日常生活と女性
第6章 広告ページに掲載された生徒・学生募集広告が伝える女子教育機関――女子寄宿学校、家政学校、女子農業学校、社会教育・福祉学校、語学学校、単科大学、工業学校、看護学校
第2部 イメージ表象と女性の戦時動員
第7章 「女性展望」が伝える味方と敵の表象
第8章 「女性展望」が伝えるヒトラー像
第9章 ドイツ人女性の戦時活動――銃後から前線まで
第10章 ドイツ人女性兵士は存在しなかったのか――国防軍女性補助員の実態
第3部 ドイツ人女性の社会進出と敗戦
第11章 全国女性指導者ゲルトルート・ショルツ゠クリンクとドイツ人女性の社会活動――公的イデオロギーと女性の地位向上のはざまで
終 章 敗戦――女性雑誌「コンスタンツェ」に描かれた敗戦直後のドイツ人女性
おわりに
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